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鬼平犯科帳 鬼平罷り通る 三嶋山燈

鬼平犯科帳 鬼平罷り通る

2月号  鴨がネギ背負って  2-2


「そのまさかだよ佐嶋、火付盗賊も甘く見られたものよのう、何一ついとぐちの見えぬまま半年が過ぎ、大目付ではこの平蔵の無能ぶりを攻めるものも多く出てきたそうな。



京極備前守さまが矢面に立たされており、まことにわしも心中穏やかならざる塩梅じゃ」



この度の一件もやはり川筋・・・・・・とするならば、後はいとぐち」



(んんっ!まてよ)平蔵は晦日のことが再びよぎっていた。



「おい 佐嶋!商いの掛取りはいつか知らぬか?」



「掛取り・・・・・でございますか?」



「うむ たいていのところが商いは掛売、それを集金するのは何時頃であろうか?」



「お待ちくださいませ、まかない方に問いただしてみまする」そう言って佐嶋は部屋を出て行った。



「お頭、普通ならば掛取りは盆と晦日だそうで、大概のところが盆暮れの集金で済ませるようにございます」佐嶋忠介が帰ってきて報告した。



「やはりなぁ わしはあの時どうもこう虫がうごめいてな」平蔵腕組みしながら目をつむる



「何でございましょう?」



「うむ 晦日の事だがな、此度の能島やの表で、わしは富山の薬売りとあわやぶつかりそうになった、そのおり、わしも相手も飛び下がってお互ぇに避けたんだがなぁ、その時のやつの一瞬だが目の光と動きが気になっておった。



これは俺の感の虫の居所が悪かったのかと思うたが、そうではないやも知れぬ、粂八を呼んでくれぬか」平蔵何やら思うことが生じたのかそう同心部屋に声をかけた。



暫くして粂八がやってきた。



「長谷川様及びと聞いて飛んで参ぇりやした」と粂八が裏木戸を開けて入ってきた。



「おお 粂!すまねぇ、実はなぁ先ほど入ぇった話では、本所常盤町の海産物問屋能島やに昨夜押込みが入ぇったそうな、で お前ぇに頼みてぇこととは、その周りで富山の薬売りが出入りしておるお店がねぇかどうか調べてみてくれぬか」



「富山の薬売りでございますか?あの置き薬の・・・・・・」



「そうよ そいつよ、出来るだけ詳しく判る方が良い」



「では早速!」と粂八が出て行った。



一時ほどして粂八が戻ってきた。



「長谷川様!ただいま戻って参ぇりやした」



「おお で如何であった?何かつかめたようだなぁその顔は、あはははは」平蔵はすでに粂八が何かを掴んだことを見抜いてそういった。



「恐れいりやす、長谷川様の仰るとおりでございやした、あの辺りを当たっておりやしたら札差しの大戸屋に先日富山の薬売りが半年ぶりにやってきたそうで」



「で?」と平蔵先が知りたいと急ぐ顔に



「へぃ それがどうも妙な話で、今まではこの数十年変わらず通っていた担ぎ屋が昨年病気だとか何とかで、若い者が代わりにやってきたそうで、そんな時ぁたいがい引き継ぎってぇものを持ってくるのが普通でございやす、ところがこの度はそれもなく、ですが、聞けば急な病とかで、まぁそんなこともあろうかと別に疑いもなく済んだそうでございやす、その時ちょいと妙だなぁとは思ったことがあったそうでございやす」



「何だいそいつは」先を話せと平蔵の言葉尻がせいていたのを感じて粂八



「そいつが妙に店の中を見回しながら、こんな大店は奉公人もさぞや寝泊まりも多いでしょうねぇとか、戸締まりなんかはご注意なさっておられるのでしょうねぇとか、妙に内情を探るような物言いに、妙な感じを受けたと言っておりやした、それとこいつぁ大きな手がかりになると思いやすが、そいつの鼻の左に大きなホクロがあって、時折りそれを掻いていたそうで」



「よくやったぜ粂八、おそらくそいつが一味のものであろうよ、よし!早速密偵共に其奴の人相を伝えて探索いたせ!わしも手すきの者と共に早速其奴を探すとしよう、おい誰か、誰か居らぬか!」と大声を上げた。



こうして新しい展開がやっと始まったのである。



 



 



 



 



 



 



 



 



 



 



その夜本所二ツ目橋言わずと知れた五鉄の二階。



持ち寄った情報を整理することになった。



与力、同心の情報は佐嶋忠介が持ち込んできた。



軍鶏鍋を囲みながら小房の粂八、相模の彦十、大滝の五郎蔵とおまさ夫婦、朝熊の伊三次が揃っていた。



「「いや 皆ご苦労!まず腹ごしらえからだ、な 腹が減っては・・・・・・」「戦も出来ねぇと来らぁねぇ、そうでござんしょう長谷川様」と彦十が口を挟んだ。



それを見て、大滝の五郎蔵「とっつあん、お前ぇそのあたりだけは気が回るなぁ、あきれたもんだぜ」と苦笑い。



「いや全く彦十の申す通り、先ずは腹ごしらえからだ。



で、佐嶋の方はどのような具合だった」



「それが中で何件かの店で同じ風体のものと見受けられるところがございました」



「こちらもご同様で、どうやらこの江戶市中を何人かで持ち回りのように回っているようでございます」と大滝の五郎蔵が、「ちょうど薬を入れ替えに入った男を見つけまして、声をかけてみたのでございます。



お茶を飲みながらそれとなく聞いてみましたら、やはり申し送りをするようで、そうでなければお得意様が警戒なさるのでと申しておりました」



「ふむ やはりなぁ、でほかに何かわかったことは無ぇかぃ」



「はい 、いつも江戸に出てきた時、宿はどうするのか聞いてみましたら、昔ながらの定宿があり、富山の者は皆そこに泊まって周るそうでございます。



「で当たって見たのであろうがそこには居なかった」と平蔵



「あっ よくお判りで、そのとおりでございます、さり気なく(なんとか言ったねぇほらこの左の鼻の近くにほくろのある・・・・・)と水を向けましたが、そんなものは富山の仲間内にはいないと言う事でございました」



「皆ご苦労だが、もう少しのところまで追い詰めたと思うゆえ、もうひと踏ん張り頼むぜ、明日からはその鼻のそばに、ほくろのあるやつを徹底的に追いかけろ、与力、同心達にもそのように申し伝えよ」平蔵が箸を伸ばす鍋にも、長きに亙ったこの事件に目鼻がついた安堵感が見えていた。



そして二日目、とうとう目指す相手を発見したと伊三次から平蔵の元へ繋ぎが来た。



伊三次からの知らせで、浅草新鳥越町幸龍寺裏に長らく空いていた家に戻るのを見届けたということであった。



早速川を挟んで対岸の百姓屋に見張り所が設けられた。



平蔵の指図で、まずはじめに川筋をあたった忠吾が川の葦叢に隠してある川船を発見した。



「おそらくこいつで縦横に移動していたのであろうよ」平蔵は読みのあたっていたことに少々安堵した風でもあった。



夕方には盗賊改めの面々が集結し、村松忠之進手作りの牡蠣煮込みの結びを頬張り、腹ごしらえも整っていた。



その夜も更け深々と冷え込む中動きがあった。



川向うの空き家付近とみられる方にかすかな灯りが漏れたのを当番の小林金弥が見逃さなかった。



「お頭!動きが出たようにございます」



「うんっ」仮眠を取っていた平蔵がやおら身体を起こした。



「動いたか!」「はい そのようで・・・・・」



「よし皆の者船の用意をいたせ、今から彼奴ら共を一網打尽にする時が来た」平蔵は各自持ち場に散るよう指図し、自らが奥まった所に密かに隠しておいた川船に乗り込みガンドウを点けて、クルクルと三回まわし、それぞれ粂八の働きで集められた川船三杯に乗り込み、舳先を川下に向け平蔵の合図を機に行動は開始された。



その間に向かいでは隠してあった船二杯に分乗して動きを始めた。



かすかな灯りを点けて川面を照らしながらゆっくりと進んでいる。



賊の船が海禅寺に差し掛かる直前平蔵の乗った小舟からガンドウが左右に大きく振られた。



盗賊を載せた船が海禅寺に近づいたその時、突然川面に灯がともり川船が川面に進んできた。



「何だぁ・・・・・・・こいつぁ」と盗賊の頭目らしき男が舳先に立ち上がって思わず叫んだ。



そこへ後ろからもガンドウが照らしだされて「火付盗賊改方長谷川平蔵である、一味のもの観念いたせ」と大声で詰め寄った。



「くっそぉ これまでかぁ・・・・・皆殺っちまえ!」と叫んだが、すでに船は取り囲まれ川岸の方へと追い込まれている。



「陸に逃げろ!」再び声が飛んだが、それを待っていたように陸からもガンドウの灯が一斉に当てられて、高張提灯までも点いている。



こうなっては最早どうすることも出来ない、抗うものはその場で切り伏せられ、川を朱に染めた。川に飛び込んだ者も一人残らず捕り方によって捕らえられてしまった。



こうして捕縛されたまま再び幸龍寺まで戻り、小笠原帯刀屋敷の前にある番屋まで連行された。



屈強な面構えの者の中に、平蔵がぶつかりかけた時の御用商人の顔も見えた。



「やはりお前ぇは只者ではなかったんだなぁ」と平蔵がその顔を見て言った。



「何だと!?」その男は意味がわからず平蔵に問いなおした。



「昨年の晦日お前ぇは本所常盤町の海産物問屋能島やに立ち寄ったであろう、
その店を出る時危うくぶつかりそうになったのを覚えておらぬのか?」



「あっ !」



「ふっ どうやら思
い出したようだなぁ、あの時の相手がこの俺だったのよ」



「くっ!」男は歯ぎしりしながら平蔵の顔を睨みつけた。



「あの時のお前ぇの顔がどうもちらついてなぁ、
あの一瞬だが俺を見たお前ぇの目つきの冷ややかさが気になっておった。



どうだ 話をする気になったけぇ?」



だが一味の誰一人として口を割るものがいなかった。



「まぁよい、夜が明けたら役人どもが来るであろう、どうせお前達は大番屋送り、
きびしき詮議の後死罪となろう、押しこみ殺人は斬首の上試し切りと決まっておる、
遠島は無いと思えよ」平蔵は冷ややかにそう言い放った。



だが誰一人声を上げる者がなかった。



それから吟味方与力の厳しい詮議が行われた結果全員が刀を帯びて折り、
過去の余罪も判明した為に情状酌量の余地なしという結論がくだされ、
死罪と決まった。



吟味方の厳しい詮議の結果判明したことは越中を股にかけた
兇賊帳(とばり)の仙蔵一味であった。



富山の薬売り友助は所持していた懸場帳を高齢であったゆえ
積まれた大金に欲が出て売ったものだった。



族の一味が掛取りを装って店の内情を探り、
目星をつけた店へ夜半に乗じて船で乗り付け、それぞれその場で猿轡を懸け
「殺しはしない」と安心させて騒ぎ出さないように図り、
強奪した後これを殺害して証拠を消した。



盗んだ金子は袋に入れ直し船に積んでそのまま夜明けを待ち、
日が昇ると同時に何食わぬ顔で川を下って盗人宿まで逃げていたという。



夜半に川を移動するのは危険が伴うし、川番屋や盗賊改めの警備に
発見されることも考えて、最も安全な方法を取っていたことが
平蔵をして感心さしめた事件であった。



「忍び混んだ庭先から目的の部屋の、
鎧戸に油を撒きこれを抜けば容易に部屋に忍び込めよう、
それぞれ二組で当たれば脅しながら縄をかけることも出来よう。



さすれば押込みは十名は必要ではないか」
平蔵の睨んだ通り押込みの人数は九名であった。



 


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その夜本所二ツ目橋言わずと知れた五鉄の二階。



持ち寄った情報を整理することになった。



与力、同心の情報は佐嶋忠介が持ち込んできた。



軍鶏鍋を囲みながら小房の粂八、相模の彦十、大滝の五郎蔵とおまさ夫婦、朝熊の伊三次が揃っていた。



「「いや 皆ご苦労!まず腹ごしらえからだ、な 腹が減っては・・・・・・」「戦も出来ねぇと来らぁねぇ、そうでござんしょう長谷川様」と彦十が口を挟んだ。



それを見て、大滝の五郎蔵「とっつあん、お前ぇそのあたりだけは気が回るなぁ、あきれたもんだぜ」と苦笑い。



「いや全く彦十の申す通り、先ずは腹ごしらえからだ。



で、佐嶋の方はどのような具合だった」



「それが中で何件かの店で同じ風体のものと見受けられるところがございました」



「こちらもご同様で、どうやらこの江戶市中を何人かで持ち回りのように回っているようでございます」と大滝の五郎蔵が、「ちょうど薬を入れ替えに入った男を見つけまして、声をかけてみたのでございます。



お茶を飲みながらそれとなく聞いてみましたら、やはり申し送りをするようで、そうでなければお得意様が警戒なさるのでと申しておりました」



「ふむ やはりなぁ、でほかに何かわかったことは無ぇかぃ」



「はい 、いつも江戸に出てきた時、宿はどうするのか聞いてみましたら、昔ながらの定宿があり、富山の者は皆そこに泊まって周るそうでございます。



「で当たって見たのであろうがそこには居なかった」と平蔵



「あっ よくお判りで、そのとおりでございます、さり気なく(なんとか言ったねぇほらこの左の鼻の近くにほくろのある・・・・・)と水を向けましたが、そんなものは富山の仲間内にはいないと言う事でございました」



「皆ご苦労だが、もう少しのところまで追い詰めたと思うゆえ、もうひと踏ん張り頼むぜ、明日からはその鼻のそばに、ほくろのあるやつを徹底的に追いかけろ、与力、同心達にもそのように申し伝えよ」平蔵が箸を伸ばす鍋にも、長きに亙ったこの事件に目鼻がついた安堵感が見えていた。



そして二日目、とうとう目指す相手を発見したと伊三次から平蔵の元へ繋ぎが来た。



伊三次からの知らせで、浅草新鳥越町幸龍寺裏に長らく空いていた家に戻るのを見届けたということであった。



早速川を挟んで対岸の百姓屋に見張り所が設けられた。



平蔵の指図で、まずはじめに川筋をあたった忠吾が川の葦叢に隠してある川船を発見した。



「おそらくこいつで縦横に移動していたのであろうよ」平蔵は読みのあたっていたことに少々安堵した風でもあった。



夕方には盗賊改めの面々が集結し、村松忠之進手作りの牡蠣煮込みの結びを頬張り、腹ごしらえも整っていた。



その夜も更け深々と冷え込む中動きがあった。



川向うの空き家付近とみられる方にかすかな灯りが漏れたのを当番の小林金弥が見逃さなかった。



「お頭!動きが出たようにございます」



「うんっ」仮眠を取っていた平蔵がやおら身体を起こした。



「動いたか!」「はい そのようで・・・・・」



「よし皆の者船の用意をいたせ、今から彼奴ら共を一網打尽にする時が来た」平蔵は各自持ち場に散るよう指図し、自らが奥まった所に密かに隠しておいた川船に乗り込みガンドウを点けて、クルクルと三回まわし、それぞれ粂八の働きで集められた川船三杯に乗り込み、舳先を川下に向け平蔵の合図を機に行動は開始された。



その間に向かいでは隠してあった船二杯に分乗して動きを始めた。



かすかな灯りを点けて川面を照らしながらゆっくりと進んでいる。



賊の船が海禅寺に差し掛かる直前平蔵の乗った小舟からガンドウが左右に大きく振られた。



盗賊を載せた船が海禅寺に近づいたその時、突然川面に灯がともり川船が川面に進んできた。



「何だぁ・・・・・・・こいつぁ」と盗賊の頭目らしき男が舳先に立ち上がって思わず叫んだ。



そこへ後ろからもガンドウが照らしだされて「火付盗賊改方長谷川平蔵である、一味のもの観念いたせ」と大声で詰め寄った。



「くっそぉ これまでかぁ・・・・・皆殺っちまえ!」と叫んだが、すでに船は取り囲まれ川岸の方へと追い込まれている。



「陸に逃げろ!」再び声が飛んだが、それを待っていたように陸からもガンドウの灯が一斉に当てられて、高張提灯までも点いている。



こうなっては最早どうすることも出来ない、抗うものはその場で切り伏せられ、川を朱に染めた。川に飛び込んだ者も一人残らず捕り方によって捕らえられてしまった。



こうして捕縛されたまま再び幸龍寺まで戻り、小笠原帯刀屋敷の前にある番屋まで連行された。



屈強な面構えの者の中に、平蔵がぶつかりかけた時の御用商人の顔も見えた。



「やはりお前ぇは只者ではなかったんだなぁ」と平蔵がその顔を見て言った。



「何だと!?」その男は意味がわからず平蔵に問いなおした。



「昨年の晦日お前ぇは本所常盤町の海産物問屋能島やに立ち寄ったであろう、
その店を出る時危うくぶつかりそうになったのを覚えておらぬのか?」



「あっ !」



「ふっ どうやら思
い出したようだなぁ、あの時の相手がこの俺だったのよ」



「くっ!」男は歯ぎしりしながら平蔵の顔を睨みつけた。



「あの時のお前ぇの顔がどうもちらついてなぁ、
あの一瞬だが俺を見たお前ぇの目つきの冷ややかさが気になっておった。



どうだ 話をする気になったけぇ?」



だが一味の誰一人として口を割るものがいなかった。



「まぁよい、夜が明けたら役人どもが来るであろう、どうせお前達は大番屋送り、
きびしき詮議の後死罪となろう、押しこみ殺人は斬首の上試し切りと決まっておる、
遠島は無いと思えよ」平蔵は冷ややかにそう言い放った。



だが誰一人声を上げる者がなかった。



それから吟味方与力の厳しい詮議が行われた結果全員が刀を帯びて折り、
過去の余罪も判明した為に情状酌量の余地なしという結論がくだされ、
死罪と決まった。



吟味方の厳しい詮議の結果判明したことは越中を股にかけた
兇賊帳(とばり)の仙蔵一味であった。



富山の薬売り友助は所持していた懸場帳を高齢であったゆえ
積まれた大金に欲が出て売ったものだった。



族の一味が掛取りを装って店の内情を探り、
目星をつけた店へ夜半に乗じて船で乗り付け、それぞれその場で猿轡を懸け
「殺しはしない」と安心させて騒ぎ出さないように図り、
強奪した後これを殺害して証拠を消した。



盗んだ金子は袋に入れ直し船に積んでそのまま夜明けを待ち、
日が昇ると同時に何食わぬ顔で川を下って盗人宿まで逃げていたという。



夜半に川を移動するのは危険が伴うし、川番屋や盗賊改めの警備に
発見されることも考えて、最も安全な方法を取っていたことが
平蔵をして感心さしめた事件であった。



「忍び混んだ庭先から目的の部屋の、
鎧戸に油を撒きこれを抜けば容易に部屋に忍び込めよう、
それぞれ二組で当たれば脅しながら縄をかけることも出来よう。



さすれば押込みは十名は必要ではないか」
平蔵の睨んだ通り押込みの人数は九名であった。



 


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