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鬼平犯科帳 鬼平罷り通る
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「あっ!ははっ!」
銕三郎その言葉通りすぐさま指を咥え舐めた後立ててみる。
風は川の方から這い上がってきている様子である。
「こちらは風下にあたりますね」
そう言い終わるのを待つまでもなく宣雄、すでに風上へと動いていた。
(さすが親父殿は…)宣雄のその対応の素早さに目を見張ったものである。
「よいか銕!この立ち位置から何が判る?」
(ははぁ親父殿は俺を試そうと……よし、ならば)と
「父上!ここより検分出来ますことでは、身なりは町家の者で、
衣服が腹のあたりで切り裂かれて観えますゆえ、辻斬りの仕業かとも…。
ただここからでは血もさほど多く流れておらず、肉色も白く、
死後の経過は朝露に濡れた血の色からも、さほど経ったとは想えません。
もしや殺害されここに打ち捨てられたとも想われます」
と答えた。
宣雄その答えを待ち
「うむ、よく視ておるのぅ、夏ともなれば一晩でも肉叢は少々黄ばんでくるもの。
まずまずそれで良い。おい銕三郎、お前と松三でこれを通りまで運び出せ」
と指図する。
「えっ!!」
二人共顔見合わせ一瞬戸惑いを見せるそれに
「何をしておる!早く致せ、ここで検分する事はならぬ。何事も衆人の
目の前で為さねば、後々疑いを残さぬとも限らぬからな」
宣雄手早く指図し、二人は両手足を抱えて骸を担ぎ出し、道端に横たえさせる。
「よし誰か戸板を借りてきてはくれぬか!」
宣雄、あたりを見渡し催促すると、暫くして番屋へ引き返したのか
戸板が運ばれてきた。
運び込んできたそれを借り受け、そこへ骸を横たえさせ、
銕三郎と木場の松三が前後を抱え番屋まで運び込んだ。
これを番屋の中へ仮置きさせ
「うむ、まずは面上からだな。よいか銕三郎、顔の具合はどうだ?」
そう言いながら銕三郎を見やる。
「はい、口を開いておるものの、肌の色は白く化粧っ気もまだ十分に
残っております」
「然様か、で?」
「はぁ?」
銕三郎その後が出てこない。