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鬼平犯科帳 鬼平罷り通る 三嶋山燈

鬼平犯科帳外伝

8月第4号  忠吾 父親になる


この(忠吾親父になる)の噂は瞬く間に広がり
「口の軽いのは私ばかりではござりませぬなぁ」
と、忠吾をも安心させるところとなった。



それからの忠吾はお勤に励み
「これまでのあ奴は一体何だったのでござろう」
と言わしめるほどの変貌であった。



非番になると、朝からいそいそと支度をして出かけ、
夜遅く帰宅する、鳩ポッポの忠吾と新しい名前を頂戴するほどである。



およねも伊三次もこの木村忠吾の献身ぶりには舌を巻くほどのもので、

「ありゃぁ仏様がどこかを間違ってしまったんじゃぁござんせんかねぇ」
といささか呆れ顔で伊三次がこぼした。



数ヶ月が瞬く間に過ぎ去り、いよいよ(おたみ)の年季が明けることになった。



(木村様のおめでた事とあっちゃぁ、俺達も黙っちゃぁすまされまい)



密偵たちや五鉄の三次郎も一肌脱いでの資金の捻出。



「お前ぇたちがそこまでやるのに、俺がやらねぇわけにもいくまいぜ」
と平蔵も一口乗った。



お陰で下谷の金杉下町万徳寺裏の十軒長屋に棲家も見つかり、準備万端整った。



「こんなにまでして頂いて、どうして私のために?」
と(おたみ)は驚くばかり。



「それもこれも、生まれてくるやや子のため、
おたみは心配しないで元気な子供を生むために精をつけてくれれば良い」
せっせと通う忠吾はもうまんまオヤジ顔である。



「木村様どうしてここまで?」



「良いではないか、俺とお前の仲、いらぬ気遣いは無用というもの、
お前はただ黙って皆の好意を受けておれば良い」



「でも あたしは・・・・・」



「ホレ!それがいらぬ気遣いと申すもの、ゆっくり休んでおれば良い、
おまさも時折覗いてくれるそうだから、何も案じることはない!」
忠吾の毎日はこうして(おたみ)で始まり、(おたみ)で終わる。



「あの忠吾がここまで変わろうとは、はぁお釈迦様でもご存知あるめぇ 
うわっはっはぁ」
と平蔵も半ば呆れながらも(あの癖が治ってくれればよいが)と思っていた。



そんなこんなで時は又もや瞬く間に過ぎ去って、
いよいよ(おたみ)の腹も突き出して臨月も真近かと想えた。



その数日後(おたみ)の隣の住人(おしま)がそれに気づき、
慌てて産婆を呼んだ。



亭主の作次がおよねにご注進に及んだところから、
一気にこの事は盗賊改めの中で広がり、平蔵や同心達の耳にの入ることとなった。



 



「こいつはてぇへんだぁ、早く木村さまにお知らせしなければ・・・・・」



伊三次があわてて忠吾の町廻りの受け持ちである下谷を探しまわった。



当の忠吾といえば、のんびりと茶屋で団子を片手に茶を飲んでいた。



「木村様ぁ」



「何だ伊三次こんな時にこのような場所で油売っていて良いのか?
全くお前というやつは・・・・・」



「それどころじゃぁござんせんよ、生まれるんでさぁ!」



「何が?又猫かぁ、全くお前たちは猫が好きだからなぁ、
程々にしておけよ、あいつのションベンは雨が降ると臭くて叶わぬ、
鼻を摘んでもどうにも逃れるものじゃァない」



「違いまさぁ 猫じゃァござんせん、(おたみ)でございますよ」



「(おたみ)がどうした?」



「ですから生まれそうなんでござんすよ」



「(おたみ)のところに猫は居なかったがなぁ」



「じれってぇなぁ (おたみ)がもうすぐ木村様の子を産みそうでございやすよ」



「何ぃ!(おたみ)がおれの子を生みそうだと!何故それを早く言わぬ!」



「ですから先程から・・・・・・」



「で(おたみ)は今どこにいる?」



決まっているじゃァござんせんか、下谷の十軒長屋に、
今頃は産婆も来ているだろうし、おまささんも駆けつけていると想いやすよ」



「判った!すぐに行くから待っておるように」



「へぇ判りやした」



伊三次はあたふたと下谷の(おたみ)の住む十軒長屋に駆け戻った。



すでに産婆は待機しており、おまさが産婆の指示で湯を沸かしたり
産着を整えたりと忙しく立ち働いていた。



「木村様は?」



「おう 見つけてこのことをお知らせしたぜ」



「で?」



「急ぎ立ち戻るからと伝えてくれと」



「それは良うござんしたねぇ」



奥から慌ただしい物音と声がした。



「早く来ておくれ!」
産婆の声が障子越しに飛んできた。



「伊三さんお湯お湯!」
おまさは伊三次にそう指図を出し障子の向こうに飛び込んだ。



「あいよ お湯だぜ、丁度人肌の温もりだと想うぜ」



「伊三さん、アンタいいご亭主になれるよ!」



「そうかなぁ・・・・」
と言いつつ中を覗こうとする伊三次に

「アッここからは男はダメでござんすよ」
と、ピシャリと戸を閉められてしまった。



「ちぇっ 何でぇ結局男はどこまで行っても判らずじまいじゃぁねぇか」
とぼやいている。



しばらくうめき声が聞こえていたが、突然

「おぎゃぁ!」力強い産声が聞こえてきた。




「やったぁ!」
その場に居合わせた伊三次や五郎蔵、それにいつのまにやら粂八と
相模の彦十までが雁首揃えて手もみしていた。



「どっちでぇ」
五郎蔵が待ちかねたように奥に声をかける。



「おまえさん大きな男の子だよ」
とおまさの弾んだ声が返ってきた。



「やったじゃぁねぇか!男だってよぅ」
彦十が鼻先をすすり上げて五郎蔵を見返す。



「今度は五郎蔵さんとまぁちゃんの番だなぁ、へへへへへっ」
彦十は涙顔をクシャクシャにしながら身を乗り出している五郎蔵に声をかける。



「へぇ こいつばっかりはどうにもならねぇ」
五郎蔵頭を掻き掻き眼は障子の向こうに張り付いたまま・・・・・・・



「判るねぇ判るねぇ、こいつばっかりゃぁ男一人じゃぁ為せねえからなぁ」



やっと障子が明けられて、丸々と太った赤ん坊が真新しい産着にくるまれ、
おまさに抱き抱えられて初のお目見えと相成った。



「へへへへっ 木村さまにそっくりじゃぁござんせんかぁ」



「どこが?」
と粂八。



「ほれほれこの目元の下がっているところなんざぁ
まんま木村様ダァあははははは」と彦十。



「とっつあん、そいつは言い過ぎってもんだぜ」
と五郎蔵。



まぁ賑やかなものである。



そこへ木村忠吾が駆け戻ってきた。



「うまれやしたぜ!」
と伊三次



「どっちだった!!」



「へい かわいい男の子でござんすよ」
と五郎蔵。



「俺に似ておるか!」



「そりゃぁまるでそっくり!」



「どれどれ!うむ まこと良い男ぶりじゃぁなぁ」



「一同?????・・・・・・」か?



まぁそんな一騒動もあって、やがてその事は菊川町の平蔵の元へももたらされた。



「そうか!男であったか、こいつはでかしたなぁ忠吾」



「左様でございますよ忠吾どの、ほんに本日はおめでとうござります」



「あっ いやぁ何そのぉ・・・・・ありがとうござります、
この木村忠吾本日の出来事生涯忘れませぬ、ぬわっはっはっは!
いやぁ男でござるよ男で!あはははははは」



「まぁ忠吾殿のかようなお顔は初めて拝見致しました」



「うむ 久栄の申すとおりじゃぁ、これで忠吾もやっと一人前になったかと思うと、
わしも少し安心できそうじゃ」
平蔵も心から喜んでいる様子である。



それから産後の肥立ちと言われるように、二十一日が飛ぶように流れた。



その間忠吾はもとより、密偵仲間も手すきを見ては下谷の長屋を見舞っていた。



忠吾の勤務ぶりも目覚ましいものがあり、平蔵をして
「つきものでも落ちたか!」
と言わしめる程の豹変ぶりに役宅の中も空気の流れが変わったようであった。



その数日後のことである。



「ててててててぇへんだぁ!」



伊三次が菊川町の役宅に裏口から飛び込んできた。



「何事だ!」
同心の沢田小平次が伊三次を制した。



「(おたみ)の姿が見えねぇんで!」



「何っ!」
驚いたのは沢田一人ではなかった。



「何事!」
同心部屋の騒動に平蔵が思わず立膝を起こした。



「おかしら!伊三次が申しますに、下谷十軒長屋
の(おたみ)の姿が見えぬそうにございます」



「なんと!」
平蔵は一瞬その言葉を信じられぬ様子で腰を落とした。



「伊三次をこれへ!」



「おい 伊三次一体ぇどうしたって言うんだえ?ゆっくり話して見ろ!」



「長谷川様 今朝ほど下谷の(およね)のところに(おたみ)がやってきて

「長い間皆様にお世話になりましたが、やっとチュウさんのご奉公が明けて、
晴れて信濃に帰ることが出来るようになりました。
これまでの皆様の御恩は生涯忘れません、よろしくお伝え下さいませ。
と挨拶に寄ったそうで、そん時男連れだったので、
およねのやつがその人は誰なんだい?と、 聞きやしたら、
あたしと一緒に江戸にご奉公に上がっていた信濃の国の高島の出で
名は忠助と言ったそうで・・・・」



「何だぁ 高島の忠助だぁ????????」



平蔵は頭をポンポン叩いて「
どこでどう 間違ぇたかは知らねぇが、こいつは又大笑いだぜなぁ伊三次!、
それにしても同じチュウ助でもこれぇぁ天と地 
はっ!お釈迦様はご存知だったのかも知れねぇぜぇ、

おお!おなごは怖ぇなぁ、男なんてぇホントのところは皆蚊帳の外で
一体誰の子やら判ったもんじゃぁねぇなぁ」



「殿様!殿方のなされた結果がすべての始まりでござります、
我らおなごはただそれを受けるのみ、
身に覚えなくば何を恐れることがござりましょうか?」

とやり返した。



「おお クワバラクワバラ!それにしても忠吾のやつ、
何と言えば良いかのう・・・・・・・」



その数日後



「おお忠吾、まことこのたびは人違いだったそうだが、
それにしてもお前ぇはよくやったのう」



「はぁ おかしら一体何のお話しでござりましょう」



「うっ うっうんうん ほれ下谷の(おたみ)・・・・・」



「ああ アレでございますか、
さて身共には何のことやら始めから身に覚えのないことでございまして」



「あっ さようか ふ~むさようかのう」



「長谷川様ぁ おみねのやつがね、ちゅうさんは懲りないわねぇって」



「何だぁ 又虫がうごめきはじめおったのかえ や
れやれ少しも治ってはおらぬわ、アレは何だったのであろうかのう」



「さようでございやすね、お天道さまの気まぐれとか・・・・・」



「違ぇねぇ そうとしか俺には想えねぇ、いやまったくだ、
奴があのままだと、お天道さまは西からら上がらねばなるまいと
こりゃぁきっと想ったんだぜあははははは」



木村忠吾健在なりであった。




画像付き 「時代劇を10倍楽しむ講座」  http://jidaigeki3960.sblo.jp/


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「こいつはてぇへんだぁ、早く木村さまにお知らせしなければ・・・・・」



伊三次があわてて忠吾の町廻りの受け持ちである下谷を探しまわった。



当の忠吾といえば、のんびりと茶屋で団子を片手に茶を飲んでいた。



「木村様ぁ」



「何だ伊三次こんな時にこのような場所で油売っていて良いのか?
全くお前というやつは・・・・・」



「それどころじゃぁござんせんよ、生まれるんでさぁ!」



「何が?又猫かぁ、全くお前たちは猫が好きだからなぁ、
程々にしておけよ、あいつのションベンは雨が降ると臭くて叶わぬ、
鼻を摘んでもどうにも逃れるものじゃァない」



「違いまさぁ 猫じゃァござんせん、(おたみ)でございますよ」



「(おたみ)がどうした?」



「ですから生まれそうなんでござんすよ」



「(おたみ)のところに猫は居なかったがなぁ」



「じれってぇなぁ (おたみ)がもうすぐ木村様の子を産みそうでございやすよ」



「何ぃ!(おたみ)がおれの子を生みそうだと!何故それを早く言わぬ!」



「ですから先程から・・・・・・」



「で(おたみ)は今どこにいる?」



決まっているじゃァござんせんか、下谷の十軒長屋に、
今頃は産婆も来ているだろうし、おまささんも駆けつけていると想いやすよ」



「判った!すぐに行くから待っておるように」



「へぇ判りやした」



伊三次はあたふたと下谷の(おたみ)の住む十軒長屋に駆け戻った。



すでに産婆は待機しており、おまさが産婆の指示で湯を沸かしたり
産着を整えたりと忙しく立ち働いていた。



「木村様は?」



「おう 見つけてこのことをお知らせしたぜ」



「で?」



「急ぎ立ち戻るからと伝えてくれと」



「それは良うござんしたねぇ」



奥から慌ただしい物音と声がした。



「早く来ておくれ!」
産婆の声が障子越しに飛んできた。



「伊三さんお湯お湯!」
おまさは伊三次にそう指図を出し障子の向こうに飛び込んだ。



「あいよ お湯だぜ、丁度人肌の温もりだと想うぜ」



「伊三さん、アンタいいご亭主になれるよ!」



「そうかなぁ・・・・」
と言いつつ中を覗こうとする伊三次に

「アッここからは男はダメでござんすよ」
と、ピシャリと戸を閉められてしまった。



「ちぇっ 何でぇ結局男はどこまで行っても判らずじまいじゃぁねぇか」
とぼやいている。



しばらくうめき声が聞こえていたが、突然

「おぎゃぁ!」力強い産声が聞こえてきた。




「やったぁ!」
その場に居合わせた伊三次や五郎蔵、それにいつのまにやら粂八と
相模の彦十までが雁首揃えて手もみしていた。



「どっちでぇ」
五郎蔵が待ちかねたように奥に声をかける。



「おまえさん大きな男の子だよ」
とおまさの弾んだ声が返ってきた。



「やったじゃぁねぇか!男だってよぅ」
彦十が鼻先をすすり上げて五郎蔵を見返す。



「今度は五郎蔵さんとまぁちゃんの番だなぁ、へへへへへっ」
彦十は涙顔をクシャクシャにしながら身を乗り出している五郎蔵に声をかける。



「へぇ こいつばっかりはどうにもならねぇ」
五郎蔵頭を掻き掻き眼は障子の向こうに張り付いたまま・・・・・・・



「判るねぇ判るねぇ、こいつばっかりゃぁ男一人じゃぁ為せねえからなぁ」



やっと障子が明けられて、丸々と太った赤ん坊が真新しい産着にくるまれ、
おまさに抱き抱えられて初のお目見えと相成った。



「へへへへっ 木村さまにそっくりじゃぁござんせんかぁ」



「どこが?」
と粂八。



「ほれほれこの目元の下がっているところなんざぁ
まんま木村様ダァあははははは」と彦十。



「とっつあん、そいつは言い過ぎってもんだぜ」
と五郎蔵。



まぁ賑やかなものである。



そこへ木村忠吾が駆け戻ってきた。



「うまれやしたぜ!」
と伊三次



「どっちだった!!」



「へい かわいい男の子でござんすよ」
と五郎蔵。



「俺に似ておるか!」



「そりゃぁまるでそっくり!」



「どれどれ!うむ まこと良い男ぶりじゃぁなぁ」



「一同?????・・・・・・」か?



まぁそんな一騒動もあって、やがてその事は菊川町の平蔵の元へももたらされた。



「そうか!男であったか、こいつはでかしたなぁ忠吾」



「左様でございますよ忠吾どの、ほんに本日はおめでとうござります」



「あっ いやぁ何そのぉ・・・・・ありがとうござります、
この木村忠吾本日の出来事生涯忘れませぬ、ぬわっはっはっは!
いやぁ男でござるよ男で!あはははははは」



「まぁ忠吾殿のかようなお顔は初めて拝見致しました」



「うむ 久栄の申すとおりじゃぁ、これで忠吾もやっと一人前になったかと思うと、
わしも少し安心できそうじゃ」
平蔵も心から喜んでいる様子である。



それから産後の肥立ちと言われるように、二十一日が飛ぶように流れた。



その間忠吾はもとより、密偵仲間も手すきを見ては下谷の長屋を見舞っていた。



忠吾の勤務ぶりも目覚ましいものがあり、平蔵をして
「つきものでも落ちたか!」
と言わしめる程の豹変ぶりに役宅の中も空気の流れが変わったようであった。



その数日後のことである。



「ててててててぇへんだぁ!」



伊三次が菊川町の役宅に裏口から飛び込んできた。



「何事だ!」
同心の沢田小平次が伊三次を制した。



「(おたみ)の姿が見えねぇんで!」



「何っ!」
驚いたのは沢田一人ではなかった。



「何事!」
同心部屋の騒動に平蔵が思わず立膝を起こした。



「おかしら!伊三次が申しますに、下谷十軒長屋
の(おたみ)の姿が見えぬそうにございます」



「なんと!」
平蔵は一瞬その言葉を信じられぬ様子で腰を落とした。



「伊三次をこれへ!」



「おい 伊三次一体ぇどうしたって言うんだえ?ゆっくり話して見ろ!」



「長谷川様 今朝ほど下谷の(およね)のところに(おたみ)がやってきて

「長い間皆様にお世話になりましたが、やっとチュウさんのご奉公が明けて、
晴れて信濃に帰ることが出来るようになりました。
これまでの皆様の御恩は生涯忘れません、よろしくお伝え下さいませ。
と挨拶に寄ったそうで、そん時男連れだったので、
およねのやつがその人は誰なんだい?と、 聞きやしたら、
あたしと一緒に江戸にご奉公に上がっていた信濃の国の高島の出で
名は忠助と言ったそうで・・・・」



「何だぁ 高島の忠助だぁ????????」



平蔵は頭をポンポン叩いて「
どこでどう 間違ぇたかは知らねぇが、こいつは又大笑いだぜなぁ伊三次!、
それにしても同じチュウ助でもこれぇぁ天と地 
はっ!お釈迦様はご存知だったのかも知れねぇぜぇ、

おお!おなごは怖ぇなぁ、男なんてぇホントのところは皆蚊帳の外で
一体誰の子やら判ったもんじゃぁねぇなぁ」



「殿様!殿方のなされた結果がすべての始まりでござります、
我らおなごはただそれを受けるのみ、
身に覚えなくば何を恐れることがござりましょうか?」

とやり返した。



「おお クワバラクワバラ!それにしても忠吾のやつ、
何と言えば良いかのう・・・・・・・」



その数日後



「おお忠吾、まことこのたびは人違いだったそうだが、
それにしてもお前ぇはよくやったのう」



「はぁ おかしら一体何のお話しでござりましょう」



「うっ うっうんうん ほれ下谷の(おたみ)・・・・・」



「ああ アレでございますか、
さて身共には何のことやら始めから身に覚えのないことでございまして」



「あっ さようか ふ~むさようかのう」



「長谷川様ぁ おみねのやつがね、ちゅうさんは懲りないわねぇって」



「何だぁ 又虫がうごめきはじめおったのかえ や
れやれ少しも治ってはおらぬわ、アレは何だったのであろうかのう」



「さようでございやすね、お天道さまの気まぐれとか・・・・・」



「違ぇねぇ そうとしか俺には想えねぇ、いやまったくだ、
奴があのままだと、お天道さまは西からら上がらねばなるまいと
こりゃぁきっと想ったんだぜあははははは」



木村忠吾健在なりであった。




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