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鬼平犯科帳 鬼平罷り通る 三嶋山燈

鬼平犯科帳外伝

鬼平犯科帳 薬食同源 3月第3号



夜見世



鬼平 「千住女郎衆は、碇か綱か、今朝も二はいの船とめた」
   とか申すそうじゃのう忠吾 お前ぇの ほれ ! 
   これが居った谷中はそちの持ち場であったのう


忠吾 お頭 ! 
   それはすでに決着が付いております
   今の私めは、御役目第一と日夜駆け回っておりまする


鬼平 まぁそういきり立つな
   益々怪しく想えてくるではないか


忠吾 そそそっ そんなぁ


鬼平 ところでのう忠吾 
   人間というやつ、遊びながら働く生きものさ
   善いことを行いつつ、知らぬうちに悪事をやってのける
   悪事を働きつつ、知らず知らず善いことを楽しむ
   これが人間だわさ


忠吾 お頭・・・・・・


鬼平 覚えておるであろう !  網切の甚五郎


忠吾 料亭大村事件でござりますな


鬼平 彼奴をお縄にするきっかけを作ったのが鴛原(おしはら)の九兵衛


忠吾 あの 芋酒屋の・・・・


鬼平 ああ 九兵衛のいもなますは天下一品だぜ


忠吾 村松様が嘆かれましょう


鬼平 おお そいつはうかつであった  
   猫どのは別格じゃ・・・・・と 言うことにしておけ


忠吾 仰せのとおりに
   ところでお頭本日は何処へお供に


鬼平 な~に 「いせや」にちょいとな

忠吾 いせや と申しますと
     板尻の吉右衛門・・・・・


鬼平 フム その通りよ
   この度の九兵衛の働きでわしも九死に一生を得た
   そこで「いせや」の親爺と俺とで九兵衛に店を出さすことになった
   本日はそのお披露目というわけさ


   芋酒はな、皮を剥いた里芋を小さく切り
   これを熱湯に浸し置き、ぬめりが取れたら引き上げて
   すり鉢で摺り、ここへ酒を入れる、それを燗にして出す
   こいつは精がつくらしいぜ忠吾
   芋酒をやったら、一晩で五人や六人の夜鷹を乗りこなすなんざぁ
   理由もねぇとよ


忠吾 おおっ お頭! それは真で!


鬼平 おいおい 忠吾 眼の色が変ぇっているぜぇ
   まぁまぁ 落ち着け忠吾
   で、 お前ぇにもそのイモナマスを食わせてやろうと思うてな


忠吾 いもなます で、ございますかァ
   私めは 出来ますれば芋酒のほうが、このぉ~


鬼平 はしかい奴め!


九兵衛 これは長谷川様


鬼平 おう 父っつあん こいつに芋酒を出しいてやってくれ
   俺は芋ナマスでよいぞ


忠吾 お頭 !! 


鬼平 おうおう 気にするな
   だがな あとは知らんぞ なぁ父っつあん


九兵衛 へぇ
    木村様
    まぁ 出来るまでの間 芋ナマスでも食いながら
    飲んで食っておくんなせいその内、
    今夜はもう岡場所へなと繰り込んで
    白粉くせぇのでも抱いてみるかぁなんて勢いも出てねぇ! 


忠吾 おおぅ そうなるか!


鬼平 そうさなぁ 最も役に立つか立たねぇか
   そいつはお慰みってぇもんだよなぁ


九兵衛 へへへへへ 最もで


忠吾 ククククッソぉ~
   いけ好かぬ親爺だなぁ
   クソ おかわりもう一杯


鬼平 旨ぇだろう そいつが腰を抜かすから 
   俺はやらんのだよ忠吾 わはははは


   父っつあん おもんは寄るけぇ


九兵衛 時折来やす
    「あのお侍さんどうしていなさるかねぇ」って
    長谷川様の事を・・・・・


鬼平 さようか
   人は皆一枚脱げば、何も変わっちゃぁいねえさ
   俺もお前ぇも なぁ父っつあん


九兵衛 長谷川様・・・・・・



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